ここまで、
① 労務管理についての相談
② 社会保険・労働保険についての相談
③ 助成金・給付金についての相談
と、災害が起きたときに経営者の方や働く方が直面するさまざまな場面について、私自身も勉強しながら考えてきました。
そして、いよいよ今回がシリーズの最終回です。
最後は、これまでとは少し視点を変えて、
「災害が起きてからどうするか」ではなく、
「災害が起きる前に、何をしておけばいいのか」
というお話です。
今回のテーマは、「BCP(事業継続計画)」です。
BCPって、なんだか難しそう……
「BCP」と聞くと、
「何だか難しそう……」
「大きな会社が作るものじゃないの?」
「うちの会社には、そんな大がかりな計画は無理」
と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、私も最初はそんなイメージでした。
でも調べてみると、最初から完璧な計画書を作る必要はないのだと分かりました。
大切なのは、
「もし明日、災害が起きたらどうする?」
と、一度考えてみること。
そして、自分たちの会社でできることから少しずつ備えていくことなのだと思います。
特に社労士が関わることのできる「労務」の部分には、今からでもできる備えがいろいろあります。
経済産業省中小企業庁では、中小企業BCP策定運用指針として、BCPの策定について解説してくれています。
こちらは少しハードルが高く感じる場合は、大阪府「超簡易版BCP『これだけは!』シート(自然災害版)」などを参考にされてはいかがでしょうか。

なお、2024年4月から介護事業所のBCPが完全義務化されています。未策定の場合、ペナルティ対象となっています。

就業規則に「災害時」のことを決めておく
例えば、災害が起きて会社を休業しなければならなくなったとき。
前回までの記事でお話ししたように、
「休業手当はどうなるの?」
という問題が出てきます。
災害が起きてから、
「どうしよう?」
「従業員には何て説明したらいい?」
と慌てるのではなく、あらかじめ基本的な考え方や対応を整理しておく。
就業規則などに、災害時の対応について一定のルールを定めておくことも、その一つです。
例えば、
- 災害など、やむを得ない事情による休業の取り扱い
- 在宅勤務へ切り替える場合の考え方
- 始業・終業時刻を変更する場合のルール
- 災害時の従業員への連絡方法
- 安否確認ができない場合の対応
などです。
もちろん、最初から完璧なものを作る必要はありません。
「まずは、会社としての基本的な考え方を決めておく」
それだけでも、いざというときの安心感は違うのではないでしょうか。
まずは「従業員の安否」を確認できるように
災害が起きたとき、経営者の方が一番気になることの一つが、
「従業員は無事だろうか?」
ということではないでしょうか。
そこで、平時のうちに「安否確認の方法」を決めておくことも大切です。
例えば、
- 電話
- メール
- SNSやチャット
- 安否確認システム
など、会社の規模や働き方に合った方法を決めておきます。
そして、
「誰が確認するのか」
「いつまでに連絡するのか」
「連絡が取れなかった場合はどうするのか」
まで決めておくと、さらに安心です。
特に、在宅勤務の方や出張の多い方、複数の事業所がある会社では、あらかじめルールを決めておくことが大切だと思います。
「どこに相談する?」も、あらかじめ決めておく
災害が起きたときは、会社の中だけでは解決できないこともたくさんあります。
例えば、
「労災になるのかな?」
「社会保険料の支払いはどうしたらいい?」
「助成金は使えるの?」
「休業手当は必要?」
といった疑問です。
そんなときに、
「どこに相談したらいいの?」
と一から調べるのは大変ですよね。
だからこそ、平時のうちに、
- 年金事務所
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 都道府県労働局
- 顧問社労士などの専門家
など、困ったときの相談先を整理しておくことも立派な備えだと思います。
前回までの記事でご紹介した保険料の納付猶予制度や助成金なども、いざというときに「そういえば、こんな制度があったな」と思い出せれば、そこから相談につなげることができます。
BCPは「一度作って終わり」ではない
BCPというと、
「立派な計画書を一冊作らなければいけない」
というイメージがあるかもしれません。
でも、そうではないようです。
会社の状況は変わります。
従業員も変わります。
働き方も変わります。
だからこそ、BCPも一度作って終わりではなく、その時々に合わせて見直していくことが大切なのだと思います。
まずは、
「うちの会社で、災害が起きたら一番困ることは何だろう?」
と考えてみる。
そして、
「では、そのために今できることは何だろう?」
と一つずつ考えていく。
それで十分、最初の一歩になるのではないでしょうか。
「うちにはまだ早い」と思っている会社こそ
大きな会社ならともかく、
「うちの会社はそんなに大きくないから、BCPなんてまだ必要ない」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、会社の規模に関係なく、そこで働いている人がいる以上、
「従業員をどう守るか」
を考えておくことは大切です。
むしろ、小さな会社だからこそ、
「○○さんに連絡する」
「災害時にはこの方法で安否確認をする」
「会社が使えないときは、こちらに業務を切り替える」
といったことをシンプルに決めておくほうが、実際には動きやすいのかもしれません。
大きなことを一度にやろうとせず、
「できるところから、少しずつ」
でいいのだと思います。
私も「備えること」の大切さを学びました
今回、BCPについて調べてみて、私自身が一番感じたことがあります。
それは、
「災害が起きてから考えるのでは、遅いことがたくさんある」
ということです。
休業手当も、労災も、保険料の猶予も、助成金も。
災害が起きてから初めて調べるのではなく、
「こういう制度があるんだ」
と、平時から知っておく。
そして、必要な記録や社内のルールを整えておく。
それだけでも、いざというときの対応は変わってくるのだと思います。
まとめ
今回、シリーズの最後としてBCPについて考えてみました。
ポイントをまとめると、
- BCPは大がかりな計画でなくても、できることから始めればいい
- 就業規則などに、災害時の休業や働き方についての基本的なルールを整えておく
- 災害時の安否確認の方法や連絡手順を、平時のうちに決めておく
- 保険や助成金など、困ったときの相談先をあらかじめ確認しておく
- 完璧を目指すのではなく、会社の状況に合わせて少しずつ見直していく
そして何より、
「何も起きていない今だからこそ、できることがある」
ということを、今回改めて感じました。
「災害時に社労士ができること」シリーズを終えて
今回の記事で、「災害時に社労士ができること」シリーズは一区切りとなります。
最初の記事では、
「災害が起きたとき、社労士として自分には何ができるんだろう?」
というところからスタートしました。
そこから、
① 労務管理
② 社会保険・労働保険
③ 助成金・給付金
④ BCP
と、一つずつ調べてきました。
調べていくうちに感じたのは、これらは別々の制度のように見えて、実は一つにつながっているということです。
それは、
「平時から備えておくこと」
です。
災害は、いつ起こるかわかりません。
だからこそ、
「何か起きてから考える」のではなく、
「何も起きていない今だからこそ、できることを少しずつやっておく」
ことが大切なのだと思います。
そして、社労士として私ができることも、きっとそこにあるのではないでしょうか。
経営者の方が、
「これってどうしたらいいんだろう?」
働く方が、
「この場合はどうなるんだろう?」
と困ったときに、
「社労士さんにちょっと聞いてみよう」
と思ってもらえる。
そんな存在になれたらいいなと思っています。
まだまだ勉強中の私ですが、今回のシリーズを書くことで、災害時の労務について私自身もたくさんのことを学ぶことができました。
これからも、知らなかった制度を一つずつ学びながら、
「知っていることで、誰かの安心につながる」
そんな情報を、私なりの言葉でお伝えしていけたらと思います。
最後までこのシリーズをお読みいただき、本当にありがとうございました。

