遺族年金制度の改正―男女差解消の転換ー
これまで遺族厚生年金は、男女で大きく制度が異なっていました。しかし、女性の就業率の上昇や共働き世帯の増加など、社会の変化を背景に制度の見直しが行われます。
2026年の年金制度改正では、在職年金制度の見直しに加えて、もう一つ大きな変更があります。それが「遺族年金制度の見直し」です。
この記事では、遺族年金制度の改正内容と、その背景にある社会の変化について、いくつかのデータをもとに考えてみたいと思います。
遺族年金制度の大きな見直し
年金改正2026で、在職年金制度の改正に続いて私が注目しているのが、遺族年金制度の見直しです。
今回の改正では、遺族厚生年金の給付のあり方が大きく変わります。
改正のポイント(有期給付への変更)
今回の改正では、配偶者が亡くなった場合の遺族厚生年金について、男女ともに60歳未満で死別した場合は原則5年間の有期給付となります。
実施時期は次の通りです。
- 男性:2028年度から開始
- 女性:2028年度から20年かけて段階的に実施
これまでの制度は男女で大きく異なっていました。
従来の制度
女性
30歳以上で死別 → 無期給付
男性
55歳未満 → 給付なし
55歳以上 → 60歳まで支給停止
このように、制度は女性に手厚い内容となっていました。
なお、改正は2028(令和10)年4月からですが、大きな制度変更であるため、周知や準備期間が設けられています。
また、あわせて
- 有期給付対象者への配慮措置
- 中高齢寡婦加算の段階的見直し
なども実施される予定です。
制度見直しの背景にある社会の変化
なぜ、このような大きな制度変更が行われるのでしょうか。
その背景を考えるために、次の3つのデータを見てみたいと思います。
1 女性の就業率
2 女性の労働力率(M字カーブ)
3 専業主婦世帯と共働き世帯の推移
女性の就業率の上昇
2024年のデータによると、女性の就業率は年々上昇しています。
- 15〜64歳女性:74.1%
- 25〜44歳女性:81.9%
- 男性(15〜64歳):84.5%
男性と比較するとまだ差はありますが、25〜44歳ではかなり近い水準になっています。
近年の伸び率を見ると、今後は男女の就業率はさらに近づいていくと考えられます
女性の労働力率(M字カーブ)の変化
女性の労働力率は、かつては出産・育児期に大きく落ち込む「M字カーブ」を描くことが特徴でした。
しかし現在は、
- 結婚しても働き続ける
- 出産後も仕事に復帰する
女性が増えており、M字カーブの谷は浅くなっています。
特に昭和43年生まれ以降の世代では、谷がほとんど見られないと言われています。
共働き世帯の増加
もう一つの大きな変化は、共働き世帯の増加です。
- 専業主婦世帯は減少
- 共働き世帯は増加
そして
1995年前後に共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、
1997年以降は完全に共働き世帯が多数派となっています。
男女平等はどこまで進んでいるのか
これらのデータから読み取れるのは、男女の就労環境の差が徐々に縮まっているということです。
このような社会の変化を背景に、これまで女性に手厚い内容となっていた遺族年金制度についても、男女平等の観点から見直しの必要性が高まってきたと考えられます。
1985年に男女雇用機会均等法が施行されてから約40年。
女性活躍社会の実現に向けて、さまざまな制度改正が進められてきました。
今回の年金制度改正も、その流れの一つと言えるでしょう。
男女賃金格差という現実
しかし、本当に男女平等な社会になっているのでしょうか。
2024年のデータでは、男性の賃金を100とした場合、
女性は75.8
という水準になっています。
この男女間賃金格差は縮小傾向にはあるものの、まだ大きな差があります。
主な要因として
- 勤務年数の違い
- 雇用形態の違い
- 管理職比率の違い
などが挙げられています。
家事・育児・介護負担の男女差
また、家事・育児・介護に費やす時間についても、依然として女性の負担が大きいことがデータから分かります。
つまり、
- 働く女性は増えている
- しかし家庭内の負担はまだ偏っている
という現状があります。
なぜ20年かけて改正されるのか
このような状況を考えると、制度を一気に変えることは難しいのかもしれません。
そのため今回の改正では、
20年という長い期間をかけて段階的に制度を変更
することになっています。
その間に
- 賃金格差の縮小
- 家事・育児・介護の負担の分担
など、社会の変化を進めていくことも期待されているのだと思います。
なお、既に受給権がある方や60歳以降の高齢者の方、20代から50代で18歳未満の子どもがいる方は原稿制度の給付が継続されます。また、所得状況や障害状況に応じて有期給付の5年経過後の継続給付等、様々な配慮措置が用意されています。
まとめ
私が若い頃と比べると、男女の格差は制度の整備や社会の意識の変化によって、確実に縮まってきたと感じます。
しかし、まだ十分とは言えない部分も多く、簡単に解決できる問題ではありません。
女性も男性も、若い世代もシニア世代も、すべての働く人が協力しながら社会を支えていくことが、これからますます大切になっていくのではないでしょうか。
今後も、社会保険や働き方に関する制度について、微力ながら情報発信を続けていきたいと思います。
次回は、子どもに支給される遺族年金の仕組みについても考えてみたいと思います。
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