リード
2026年10月から、企業に対してカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務化されます。
これまで「お客様だから仕方がない」「客なんだから、対応して当たり前」とされがちだった問題が、ついに対策すべきこととして法制度で明確に位置づけられました。
今回は、カスタマーハラスメント対策が法制化された背景や具体的な内容を整理するとともに、企業・働く人・顧客それぞれに求められる意識の持ち方について考えていきたいです。
カスタマーハラスメント対策が法制化へ
令和7年6月に労働施策総合推進法が改正され、カスタマーハラスメント防止のための雇用上の措置義務が企業等(中小企業を含む全事業所)に課せられ、令和8年10月から施行されます。
カスタマーハラスメントとは何か
大阪府労働センターが令和7年12月に作成した「職場のハラスメント防止・対応ハンドブック」では、職場におけるハラスメントの全体像として、法律で以下のように定めています。
・セクシャルハラスメント
・パワーハラスメント
・カスタマーハラスメント
・妊娠・出産・育児休業・介護休暇等に関するハラスメント等
その中でカスタマーハラスメントについては以下のように定義されています。
カスタマーハラスメントとは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容から社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により
労働者の就業環境が害されるもの」となっています。
クレーム自体が悪いということではありませんが、度を越えて不相当なものが問題なのです。
大阪府のハンドブック参照
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/6137/zentai.pdf
カスタマーハラスメントの具体例
「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例
・企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない
・要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない
「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例
・身体的な攻撃(暴行・傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃
・金銭補償等の要求
なぜ今、カスタマーハラスメントが問題になっているのか
改正に先がけて実施された「職場のハラスメントに関する実態調査令和5年度」によると「顧客等からの著しい迷惑行為」(カスタマーハラスメント)の相談があったと回答した企業の割合が27.9%と前回3年前の調査に比べて、8.4%も増加しました。
企業調査でカスタマーハラスメントについて、過去3年間の相談があった企業の割合をみると、パワハラやセクハラに続いて高くなっていて、過去3年間の推移では、カスタマーハラスメント件数だけが、増加している割合の方が減少している割合より高いという結果が出ています。
また、各ハラスメントの相談があった企業のうち、カスタマーハラスメントに該当する企業の割合が92.7%と最も高く、相談件数同様に件数が増加している割合が減少している割合より高い結果となっています。
カスタマーハラスメントの具体的な内容については「継続的な執拗な言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)72.1%、威圧的な言動(大声で責める等)52.2%、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の要求等)44.7%となっています。
カスタマーハラスメントが問題となっている要因としては、企業側や働く人々、そしてサービスの提供を受ける側の顧客の間で蔓延している昔ながらの気風というのが、大きな問題となっているように感じます。
これぐらいは大丈夫という、勝手な思い込みは現在社会では通用しません。
これは他のハラスメントを含めた全てのハラスメントに共通するものです。
このところの首長等によるパワハラやセクハラ問題もその一例のように感じています。
カスタマーハラスメントがもたらす影響
このカスタマーハラスメントによって、心身的にダメージを受けて、職場に出勤できない状況に陥ることもあり、本人の生活及び企業の損失は著しいものがあります。
心身の影響として、被害者のメンタル不調(うつ病、適応障害)や身体的症状(動悸、不眠)、休職や退職などがあります。
企業の損失として、職場全体の士気低下、生産減少、人材流失、社会的信用失墜などの甚大な悪影響を及ぼします。
企業等が対応を誤ると損害賠償問題に発展するケースもあります。
他のハラスメントも含め、組織として体制を整えることで、防止できることがあります。
労働施策総合推進法改正の内容
今回の労働施策推進法の改正の趣旨として、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、ハラスメント対策の強化、女性活躍推進法の有効期限の延長を含む女性活躍の推進、治療と仕事の両立支援の推進等の措置を講ずることとなっています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001502748.pdf
時代の変化によって、新たな対応が必要となってきています。
企業に求められるカスタマーハラスメント対策とは
そして、カスタマーハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務になることが明記されています。
なお、ハラスメント防止に関する指針に示されている事業主が講ずべき措置の内容等は以下のとおりです。
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
・職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
・上記の措置と併せて講ずべき措置として、相談者等のプライバシーの保護、不利益取扱の禁止等
まずはカスタマーハラスメントによるメンタル不調等がおこらないように、安心して相談できる体制づくりを行うことが大切です。
企業等に義務化されるカスハラ対策と従業員の顧客対応の改善点で、企業等におけるカスハラ対策の基本的な枠組みとして〈カスハラを想定した事前の準備〉と〈実際にカスハラを起きたら際の対応〉で提示されています。
政府広報オンライン「カスハラ?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ被害者とならないためのポイントをご紹介」参照
これからの企業と働く人の意識
企業や管理監督する立場の人たちは、その組織で働く人たちの働く環境にもしっかり向き合う必要がありますね。
そして、働く側についても、仕事のノウハウの習得とプロフェッショナルとしての意識を持って、顧客の期待に応えていこうという姿勢も大切ですね。
良質な商品、サービス等を提供し、それに見合った対価を受け取る、それが経済社会を発展させていく原点で、良好な循環を生み出す原動力になります。
そのうえで、過剰な相手方からの要求については、拒否できる仕組み、組織づくりが重要になってくると思います。
厚生労働省では「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が作成されています。
企業が具体的に取り組むべきカスタマーハラスメント対策について具体的に掲載されていますので、ぜひ参考にしてください。
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/001104928.pdf
顧客が「加害者」とならない(させない)ために
そして、「顧客がカスハラ加害者とならない(させない)ためのコミニケーションとは」で、「上手な意見の伝え方チェックリスト」として5つのポイントを紹介しています。
・ひと呼吸、おこう
・具体的に伝えよう
・相手の話を最後まで聞こう
・相手(従業員など)の立場を理解しよう
・相手に敬意を持って接しよう
顧客だから、お金を支払っているのだからという過剰な要求は、結果として、お互いに良質なサービスにはつながりませんね。
ヒートアップしそうになったら、このチェックリストを思い出してください。
社労士の役割と支援できること
我々社労士は経済社会の発展と働く人たちの福祉の向上に貢献する使命があります。
そして、労働関連法のプロフェッショナルです。
企業側で一から方針の作成や相談窓口の設置、支援の体制づくりを準備するのが大変な場合もあるかもしれませんね。
企業支援の窓口として、社労士を活用することもできます。
そんな時はお近くの社労士に相談されることもできますので、全国社会保険労務士会やお近くの都道府県社会保険労務士会にお問い合わせください。
企業や働く人、そして顧客等を被害者にも加害者にもさせない取組により、三方よしの人にやさしい社会をつくり上げていきましょう。
| 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 現在、開業・勤務以外のその他社労士として、都道府県社労士会や全国社労士会のweb研修、所属支部の勉強会に参加しながら、開業することをめざして、日々研鑽に努めています。 これから社労士やその他の様々な資格取得をめざして勉強している方や、これからの人生をどのように充実させていこうかと考えておられる中高年の方々に少しでも参考となる、元気になる、情報を発信していきたいと考えていますので、どうぞ、よろしくお願いします!人生はまだまだこれからです。一緒に楽しみながら、頑張っていきましょう〜♪ |
